2011/07/04

社員をパネル会員とした調査サービスは有効か [週刊IFWA 2011/5/23]

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■ 社員をパネル会員とした調査サービスは有効か

マーケティング・リサーチの世界はインターネット普及で様相が相当変わってきています。品質論議を別にすればインターネット調査によって調査コストを安くすることができ、インターネット調査が急速に普及してきました。

また掲示板、ブログ、Twitterなどネット上の様々な書き込みから、口コミ分析をすることも容易になりました。ただ日本の場合、あまり発言しないという文化的な側面もあり、相当メジャーなブランドでもない限り、分析に耐えうる口コミの量が集まらないという話を聞いたことがあります。もう一つの大きな流れは「個人情報保護」でしょうか。いずれにしても昔ながらのマーケティング・リサーチをする環境は崩れてきています。

20世紀の調査をやっていたものの常識としてあるのは、広告・調査業界の者やマーケティングに直接携わっている者は、調査対象者として参加してはならないというのがあります。暗黙のルールなのか顕在化しているルールなのかは忘れました。少なくとも日本マーケティング・リサーチ協会のサイトをざっと見た限り、綱領やガイドラインには見当たりません。

例えばテレビ局の社員がたまたま、テレビ視聴率の調査パネルになったことを考えれば、容易に想像できるわけですが、関係者が数字を操作できることを排除するための当然の心構えなわけです。

そんな中、5月20日にベルシステム24は「しらベルよちゃん」という、自社3万人の社員をベースに調査パネルを構成して、調査を行うサービスを開始するというリリースがあり、ビックリしました。http://www.bell24.co.jp/ja/company/pressrelease/2011/110520/110520.pdf

特徴として「高いクオリティ」「追跡機能が可能に」「サンプル配送コスト削減」とあります。社員は「生活関連商材・サービスに対する情報感度が高いだけでなく、企業と消費者を繋ぐ仕事に従事していること、マニュアルの要旨を捉えることに精通している」、だから「高いクオリティ」だというのですが、皆さんはそのまま受け入れられますか?

「マーケティングや消費者の行動などに対して意識の高い人」だけを対象にした調査結果が、一般に適用できる部分と出来ない部分があると思います。100%否定する積りはありませんが、経験的に言うと、意識の高い人と低い人の間には相当なギャップがあります。この手法が適用できる分野は限られるのではないかなと思います。

様々な手法が次々に出てくるのはよいと思うのですが、マーケティング・リサーチの世界も、暫くは混沌とした世界が広がっていくような気がしています。面白い時代になったとも言える訳ですが。。。

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