その中から引用した下図をご覧頂きたい。古典的なトリックでよく使われるのだが、左と右の二つの異なるスケールの軸で数字を表現し、自分の主張の裏づけとして印象付ける方法がある。
この場合の問題点として考えられるのは、同時に表示している数字があまりにも桁違いという点で、グラフの上限では、利用者数が8万人と240万人30倍違っている。もう一つは、左軸がゼロを基点として軸を作っているのに対して、右軸は途中の数値を基点としている点。右軸がゼロを基点にしたグラフであれば、殆んど一直線にしか見えないグラフになる。
もちろんこの二つの数値が連動しているという解説はしていないので、こういった双方の動きが分かりやすいグラフを作るのはわかる。本人は、きちんと軸に数値を入れておけば問題ないと考えたに違いない。しかしぱっと見た人は、二つの数値が「連動して動いている」という印象を強くするのは否めない。もはや文脈を超えて、グラフも一人歩きを始める。
私自身も2軸のグラフを結構使っていると思う。ではどういう場合に使っているかというと、比較するという目的で使わないということだ。同じ指標で、様々なスケールの数値を時系列で表示するような場合、「全体」と「部分」を一つのグラフに集約する時などに使う。「部分」の数が多いと、当然スケールが違ってくるので、「部分」のスケールを変えた2軸の折れ線グラフで表示するのだ。この場合は連動性には関心がなく、それぞれの「部分」の動きの特徴を見てもらうことが主眼となる。
そうは言っても「全体」と「部分」の動きの連動性は見えてしまうので、スケールの違いはどんなに大きくしても10倍だろうし、ましてや基点が0以外のものを使うということは余程の意図がないと使わない。また2軸のグラフの見方やコメントは必ず付ける習慣がある。
視覚のトリックは他にもあるが、非常に効果的なので、上級者は上司を説得するために使うとよいかもしれない(推奨しないし、責任は負えないが)。逆に言えば、この手のグラフを見たら、相手の意図と事実を正確に捉えることの両方を怠らないようにしたい。
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