テレビ視聴率は、メディア・リサーチの代表格だ。ウェブもメディアの一種なので、テレビ視聴率に学ぶところが多いにある。知っているようで知らないのがテレビ視聴率なので、何回かにわたって解説する。
今回は誰のデータを収集しているかという問題に関して焦点を当ててみる。ビデオリサーチのテレビ視聴率調査に関して公表されている情報から考察してみよう。ビデオリサーチの視聴率の調査方法は? によれば、調査方法はPM(ピープルメータ)システムとオンラインメータシステムと日記式の3種類からなる。日記式はラジオくらいだろうと思っている人も多いのではないか。そんな旧態然とした方法があるのかという方もいるかもしれないが、現実はそんなものである。
調査地区は、視聴率調査は日本全国で行っているんですか?-世帯視聴率調査地区-にあるように、現在全国32放送エリアで27エリアでPMシステムとオンラインメータシステムによる調査を実施している。PMシステムは3大都市圏で各600世帯が対象となっており、世帯視聴率と個人視聴率を同時に調査するシステムだ。テレビごとに設置した視聴チャンネルを測定する「チャンネルセンサー」と、個人の視聴を入力・表示する「PM表示器」により世帯視聴率と個人視聴率を同時に調査する方法を、ビデオリサーチでは独自に開発し利用している。4歳以上の家族全員が対象で、調査対象テレビ台数は8台までだ。
3大都市圏以外の24エリアは各200世帯が対象で、世帯視聴率はオンラインメータシステムによる調査、個人視聴率は日記式による調査になっている。オンラインメータシステムは、人口の多い8地区で52週(つまり毎日)、残りの16地区は24週(月に2週間だけ)で、いづれも調査対象テレビ台数は3台までだ。日記式はサンプルが300世帯で、エリアによって頻度が異なっている。
さてここで話題にしたい一つが、機械による測定方法である。PMシステムによる個人視聴率であれば、どのようにして「おとうさんが見た」ということを知らせる方法をとっているのがが重要になる。視聴率の調査方法は?によれば、「PM表示器には世帯内の個人各々のボタンがあり、視聴の開始時と終了時にそれを押すことにより個人の視聴を登録していただきます。ボタンには個人の顔のイラストをつけ、入力確認がしやすいよう工夫しています。リモコンによる遠隔操作も可能です。(調査対象は世帯内の4歳以上の家族全員)」とある。
ここで色々な疑問が湧いてくる人と、単に「そうなんだ」で終わる人の違いが重要だと私は考えている。そのような機械による調査方法だとしたら、「別の人が押し間違えたらどうなるの」とか「視聴が終わっても押しっぱなしになっていたらどうなるの」とか「4歳の幼児がそんな操作ができるの」とか「猫がボタン押してしまったらどうなるの」(よく猫が見ても視聴率とか言われてしまうので、敢えて例に出した)とか、私なら気になることが山のように出てくる。
つまり疑い深いことが調査の本質を知る上で重要だと考えている。実はリサーチ・リテラシーで重要なポイントだと思っている。ビデオリサーチくらいの会社であれば、当然いろいろなケースに応じ、抜かりなく対策を講じているはずだ。この方法に関してはまた別途お話したい。しかし大してコストを掛けられない調査だと、どこまで精緻にやっているかは疑問で、クライアントとしては、調査のやり方の詳細を調査会社に開示してもらい、納得した上で実施するということが重要だ。
日記式だってそうだ。調査票には5分刻みの記入欄があり、調査対象者はテレビごとに、個人単位でテレビを見た時間に矢印線を引く方法で、1週間毎日記入してもらうのだが、どこまで正確に記入してもらえるだろうかと心配は尽きない。しかし何事も100%はあり得ない訳で、お客の立場としては、なるべく間違いが少ないような運用をしてもらう努力を調査会社にしてもらい、調査方法の詳細はきちんと説明してもらい納得の上行うということでしかない。
当然手間ひまを掛ければ費用が高くなる訳で、コストが安くしかも精度も高くなどという無理な話をしてはいけない。広告モデルでもない限り、只ほど高くつく(いい加減で取り返しがつかない)ものはないのは自明の理で、精度の高いデータは当然高くつくのだ。
3大都市圏以外のサンプルが200世帯という数も、サンプリング誤差は結構あるが、ビデオリサーチとお客様がコストとデータの精度の兼ね合いで落ち着いた数ということになる訳だ。200サンプルのエリアで、世帯視聴率が10%の番組は、信頼度95%では、何と±4.2%の誤差があるので、実際は5.8%~14.2%の視聴率ということになる。何度もいうが、電通さんやテレビ朝日さんもこれは重々承知の上で使っているということなのだ。
これと同様にインターネット視聴率やアクセス解析では、実際どういった仕組みで、何が取れているのかといった点が重要になる。精度の低い指標やデータもあるので、こちらも正確な情報がデータの正しい解釈のためには重要なポイントになる。こちらはまたの機会にお話する。
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