2025/09/04

反転幾何を利用した、アポロニウスの問題(CCC)の解までの作図手順(ジェルゴンヌの解法その2)

本ページでは、アポロニウスの問題(CCC)が、「ジェルゴンヌの解法その1」ページで紹介した手順で何故解けるのか、それでよいのか、といった解説をしていく。根本的な考え方には「反転」があると解釈しているので、反転幾何の性質を利用しているポイントを中心に説明した中で、必要になる概念である②根心や根軸について、そして同様に③極点や極線について説明したい。ただ、筆者もそれらの新しい概念について、分かりやすく正確に紹介できたとは思っていないので、そのあやふやな部分も正直に記述していきたい。

ジェルゴンヌの解法の根本方針
まず、ウィキペディアにおいてはジェルゴンヌの解法の前段階の「反転による解の対」の項において、「問題に対する解は一般には対で生じる、つまり各解円に対して共役な解円(2つの解円の対)が存在する」という(個人的には不思議な)天下り的な宣言から始まる。

そして「任意の3つの相異なる円は、その3つすべてに垂直に交わるただ1つの円(根円)を持ち、この円の中心を3つの円の根心と呼ぶ」と続く。「根心」の前に「根軸」を説明しよう。2 円が与えられたとき,2 円に関する方べきが等しい点の軌跡をこの2円の根軸という。分かりやすく言えば、「2円への接線の長さが等しい点の軌跡」である。分かりやすく2 円(O1,O2)が交わっている下図で説明すると、根軸は円O1と円O2の2交点(点Rと点S)を結ぶ直線である。何故なら方べきの定理から、根軸上の点はAは、AP^2=AS・AR=AQ^2になるからだ。
そして「根心」は、
3 円が与えられたとき,3 円に垂直な円の中心、すなわち3 円に関する方べきが等しい点」である。こちらも分かりやすい例で、3 円が全て交わる場合の例で言えば、2 円どうしの根軸の3 つが1点で交わり、この点が根心になる。なお本編は、3 円が離れている場合の根心の求め方だった。
そして、「根円は3与円に直交するので、この根円に関する反転で与円は変化しない。同じ反転下では対応する解円の接点も互いへ変換される」とある。前半は反転の性質から導かれた定理「反転円に直交する円の反形は、その円自身である(不動円)」そのものだ。忘れた方は「「アポロニウスの問題」を解くのに反転幾何を利用する」ページを参照して欲しい。後半の「同じ反転下では対応する解円の対は交換され、その接点も互いへ変換される」とあるが、下図で言えば、3 円に直交する円を反転円とすれば、まさに解円C1とC2は反形どうしの対になっているので、明らかだ。これも忘れた方は上記ページを参照して欲しい。
そして、これら共役接点を結ぶ直線(上図のA1B1,A2B2,A3B3)は反転の下では不変である。よって、これら直線は反転の中心(根心)を通るので、根心以外にA1B1,A2B2,A3B3上のどこかの3 点を通ることが特定できれば、A1~A3とB1~B3の6点のうちの3点ずつを通る円を描けばそれが二つの解円になるはずだという訳だ。

続いてウィキペディアの「円環への反転」などの項を飛ばして「ジェルゴンヌの解法」の項の解説に続いていく。「これら直線と解円 Ca および Cb の根軸 R との間の相反関係を指摘した。この相反性を理解するには、接点 A1 および B1 に引かれた C1 に対する2つの接線と解円を例に考えてみるとよい。これらの接線の交点は直線 L1 の C1 における極点である。極点から接点 A1 および B1 までの距離は等しいため、この極点は解円の根軸 R 上にあるはずだということができる。このような極点と極線の関係は相反である。つまり、もし C1 における L1 の極が R 上に存在するのであれば、逆にC1 における R の極も L1 上に存在する。よって、もし R を引くことができれば、C1 における極 P1 を求めることができ、これは L1 上の求めるべき2点のうちの残りの1つを与える」が筆者には具体的に落とし込む方法が理解できなかった。

まず極点と極線について、説明すれば次のようになる。下図と対応して理解して頂きたい。円Oの中で円の中心以外の点Pを取る。円Oに関する点Pの反転先をP’とする。点P'を通りOPに垂直な直線を m とする。このとき、線 m は円Oに関する点Pの極線といい、点Pは円Oに関する直線 m の極点という。一方点Pを通りOPに垂直な直線を l とする。直線 l の極点はP'である。相反関係とは、一方が決まればもう一方も決まるという関係と考えれば良さそうだ。
結局やることは、本編で行ったように、与円の中心から与円の根軸(=解円の根軸)に垂線を下ろした点の反転先を見つければよさそうだと無理やり解釈したのだが、作図するとピッタリくる。しかしここが一番怪しかった部分だ。

そして「ジェルゴンヌは未知の解円の根軸 R を次のように求めた。任意の円の対は2つの相似の中心を持つ。これら2点はこの2つの円に対する接線の2つの可能な交点である。よって、3つの与円は6つの相似の中心点を持つ。これら6つの点は4つの直線上に存在し、3つの点はそれぞれの直線上に存在する。さらに、それぞれの直線は潜在的な解円の対の根軸に対応している」とあり、証明も提示してくれているが、ここもよく分からなかった。

しかし、解円の根軸と与円の根軸が対応しているということと、3つの与円から6つの点を作り出し、それを結べばよいという根軸の具体的な作り方はそのまま真似ることはできた。しかし「ジェルゴンヌの解法その1」ページの「四つ目の解円の対(根軸R4を使う)の場合」において、交わらない2 円の根軸がどうしてあの離れた場所にあるのかは直感的に理解することができなかった。3 円の根軸の中で、1つだけ特殊な感じがしてモヤモヤしている。

ということで、まことにまとまりのない解説になってしまったが、決定的な間違いなどがあれば、識者の方に賜りたいと思っている。とにかくこうやってまとめてみないと始まらないので、アポロニウスの問題についての追求の旅はお終いにしたいと思う。ご指摘があれば、追記することもあるだろう。

反転幾何を利用した、アポロニウスの問題(CCC)の解までの作図手順(ジェルゴンヌの解法その1)

3つの円と接する円(CCC)の問題で「3円が包含関係になく、かつ全て離れている場合」を単に反転幾何を使って最後まで解く方法はどうしてもわからなかった。ウィキペディアをみても、「反転とその応用」サイトを参照しても、円環へ反転するところまではわかったが、その後、円環問題を代数的に解く方法や円の膨張と収縮に持っていく方法以外はどこにもなく、自力で解く実力もなく、それ以外の定規とコンパスで作図する方法は無さそうに思えた。

そこで、ウィキペディアがその先に書いていた「ジェルゴンヌの解法」を何とか読み解き、恐らく間違いなさそうだと辿り着いたので、恥を忍んで書くことにした。ジェルゴンヌの解法は考え方の根本は反転を使っているが、さらに根心/根軸、極点/極線といった概念まで理解する必要がある。長編になってしまうことが予想されるので、「とにかく解までの手順を示す」編と「なぜそれが解になるのか」編の2ページに分割した。本ページはその前者で、とにかく一直線に解答を示そう

3 つの円と接する円は、一般には以下のように8 つの解(青円)があるこの問題の解の作図を反転幾何プラスアルファで解くことができたので、紹介する。手順数はもう本質的な問題でもないので数えない。なお、図はかなり線が密になるので、はっきりわかるように大き目の画像を貼ってあるので、クリックして別画面で表示しながら確認して頂きたい。

3 つの円と接する円の作図
条件:互いに包含関係もなく、接せず交わらない与円O1, O2, O3(円の中心点O1, O2, O3は既知とする)(赤表示)
解の数:一般解は 8つ

方針(詳細は解説編ページで)反転幾何の性質を利用し、根心/根軸、極点/極線といった新しい概念も活用する。言葉の定義含めて、解説編ページで確認して頂きたい。

作図手順:
第一段階3与円の根心を、各2与円の根軸の交点から作図する
①点O1と点O2、点O2と点O3を結ぶ直線O1O2、直線O2O3を引く
円O1O2の二円、円O2円O3の二円に交わる任意の円O4,O5を描く
円O4と円O1との交点を結ぶ直線 m1 を引く
円O4と円O2との交点を結ぶ直線 m2 を引く
⑤m1とm2の交点をP1とする
⑥点P1から直線O1O2に垂線を下ろし、その直線をL12(青線)とする
※この直線L12が2与円O1,O2の根軸というものになる
⑦円O5と円O2との交点を結ぶ直線 m3を引く
⑧円O5と円O3との交点を結ぶ直線 m4 を引く
⑨m3とm4の交点をP2とする
P2から直線O2O3に垂線を下ろし、その直線をL23(青線)とする
※この直線L23が2与円O2,O3の根軸というものになる
⑪L12とL23の交点が3与円の根心G(青点)である
もう一つの2与円O1,O3の根軸もこの根心で交わるので必要ない


第二段階3与円の相似の中心6点から、解円の対の4つの根軸を作図する
※相似の中心とは、2円の外接線/内接線同士の交点である
円O1と円O2円O2と円O3円O3と円O1、3対それぞれの2円の外接線/内接線を引き、それぞれの2交点、合計6交点(これが相似の中心)を描く
②その6交点から、4つの直線(青線R1,R2,R3,R4)が描かれる
※これが将来分かる2解円の組の根軸に対応している(それが4組で8解円になる)


第三段階2 解円のを描く(番号は③から)
③3与円の中心からそれぞれ、解円の一つの根軸Rn(R1,R2,R3,R4)に垂線を下ろし、3交点をS1,S2,S3とする
④S1,S2,S3をそれぞれ3与円O1,O2,O3で反転した点をU1,U2,U3とする
⑤与円の根心G(第一段階で作図済み)とU1を結ぶ直線とO1の交点をA1,B1とする
⑥与円の根心GとU2結ぶ直線とO2の交点をA2,B2とする
⑦与円の根心GとU3を結ぶ直線とO3の交点をA3,B3とする
⑧解円の一つは、点A1,A2,A3を通る円C1,C3,C5,C7
⑨もう一つの解円は、点B1,B2,B3を通る円C2,C4,C6,C8

一つ目の解円の対(根軸R1を使う)の場合⑤~⑦に注意
⑤の交点の割付は、根心から遠い方からA1,B1を割当てる
⑥の交点の割付は、根心から遠い方からA2,B2を割当てる
⑦の交点の割付は、根心から遠い方からB3,A3を割当てる

③④までの図
⑤~⑨までの図

二つ目の解円の対(根軸R2を使う)の場合⑤~⑦に注意
⑤の交点の割付は、根心から遠い方からA1,B1を割当てる
⑥の交点の割付は、根心から遠い方からB2,A2を割当てる
⑦の交点の割付は、根心から遠い方からA3,B3を割当てる

③④までの図
⑤~⑨までの図

三つ目の解円の対(根軸R3を使う)の場合⑤~⑦に注意
⑤の交点の割付は、根心から遠い方からB1,A1を割当てる
⑥の交点の割付は、根心から遠い方からA2,B2を割当てる
⑦の交点の割付は、根心から遠い方からA3,B3を割当てる

③④までの図
⑤~⑨までの図

四つ目の解円の対(根軸R4を使う)の場合⑤~⑦に注意
⑤の交点の割付は、根心から遠い方からA1,B1を割当てる
⑥の交点の割付は、根心から遠い方からA2,B2を割当てる
⑦の交点の割付は、根心から遠い方からA3,B3を割当てる

③④までの図
⑤~⑨までの図

以上で8 つの解円が求められた。2 円の対が4 組で8 円になっている。実際冒頭にあった解円ときちんと対応していることがわかるだろう。


2025/08/24

反転幾何を利用した、アポロニウスの問題(CCP)の解までの作図手順

1つの点を通り、2 つの円と接する円は、一般には以下のように4 つの解(青円)があるこの問題の解の作図を反転幾何を利用して解くことができたので、紹介する。こちらも手順数から言えば、反転幾何を利用する方が簡単ということにはならなかった。

1つの点を通り、2 つの円と接する円の作図(133手順)
条件:交わらない与円C1, C2(円の中心点C1, C2は既知とする)、両円の外側にある点Aが与えられている(赤表示)
解の数:一般解は 4つ

方針(反転の使い方):点Aを中心とした適当な円を反転円とし、与円を反転転換させる。その上で二つの円の接線の接点を引く。この直線は無限遠を通る円と考えてもよい。そしてこの「円」は2円に接しているので、反転させれば元の2円に接する円になるはず(反転の性質から)。また無限遠を反転変換すると、反転円の中心になるのだったので、共通接線の接点を反転すると、反転円の中心点Aと併せても求める円の円周上の3点が決まる。よって、この3点を通る円を描けばよい。

作図手順:
第一段階二与円の反形を描き、その2円の共通接線を引く(97手順)
①Aを中心とする反転円Aを描く(1)
②円C1(左図赤円)を反転円Aで反転させた円C1'(左図青円)を描く(26
(「反転先の作図パターン」ページの「反転の中心を通らない円(反転円の外側にある)の反形の作図」を参照のこと)
③円C2(左図赤円)を反転円Aで反転させた円C2'(左図青円)を描く(26)
④円C1' と円C2の共通接線m1, m2, m3, m4(右図青線)を引く(44)
(「基本作図パターン集」ページの「2 円の共通外接線を引く」と「2 円の共通内接線を引く」を参照のこと)

第二段階求める円の一つ(接線m1の場合)を描く(9手順*4パターン)
接線m1の場合の2円との接点をT1, T2とする
①直線AT1を引き、C1との交点をB1とする。これがT1の逆点になる(1)
直線AT2を引き、円C2との交点をB2とする。これがT2の逆点になる(1)
A,B1,B2を通る円C3(青円)を描けば、それが求める解円の一つになる(7)
PPP問題のページを参照のこと)

後は、第二段階の接線m2, m3, m4の場合を同様に行えばよい。それぞれ対応するm,T,B,C のセットを次のように書きかえれば良い。(m2,T3,T4,B3,B4,C4),(m3,T5,T6,B5,B6,C5),(m4,T7,T8,B7,B8,C6)。それぞれ青円が目的の解円として、図だけ列挙しておくことにする。



反転幾何を利用した、アポロニウスの問題(CLP)の解までの作図手順

アポロニウスの問題の一つ、1つの点を通り、1つの直線と一つの円に接する円は、一般には下図のように4 つの解(青円)があるこの問題の解の作図を反転幾何を利用して解くことができたので、紹介する。こちらも手順数から言えば、反転幾何を利用する方が簡単ということにはならなかった。

 1つの点を通り、1つの直線と一つの円に接する円の作図(116手順)
条件:点A、直線 l 、円C(中心点Cは既知)が与えられている(赤表示)
解の数:一般解は 4つ

方針(反転の使い方)点Aを中心とし、与直線に交わる適当な円を反転円とし、与直線とを反転転換させる。どちらも円に転換されるのでえ、その二円の接線を引く。この直線は無限遠を通る円と考えてもよい。そしてこの「円」は2円に接しているので、反転させれば元の与直線と円に接する円になるはず(反転の性質から)。また無限遠を反転変換すると、反転円の中心になるのだったので、共通接線の接点を反転すると、反転円の中心点Aと併せて求める円の円周上の3点が決まる。よって、この3点を通る円を描けばよい。

作図手順:
第一段階与直線と与円の反形を描き、その2円の共通接線を引く(80手順)
①Aを中心とする反転円Aを描く(1)
②直線 l を反転円Aで反転させた円C1(原点Aを通る円になる)を描く(9)
(「反転先の作図パターン」ページの「反転の中心を通らない直線(反転円と交わる)の反形の作図」を参照のこと)
③円Cを反転円Aで反転させた円C2を描く(26)
(「反転先の作図パターン」ページの「反転の中心を通らない円(反転円の外側にある)の反形の作図を参照のこと)
④円C1と円C2の共通接線(青線)を4本(m1, m2m3m4引く(44)
(「基本作図パターン集ページの「2 円の共通外接線を引く」と「2 円の共通内接線を引くを参照のこと

第二段階求める円の一つ(接線m1の場合)を描く(9手順*4パターン)
接線m1の場合の2円との接点をT1, T2とする
①直線AT1を引き、直線 l との交点をB1とする。これがT1の逆点になる(1)
直線AT2を引き(T2はm1 との接点であって、直線AT2は円C2の接線にはなってないことに注意)、円Cとの遠方側交点をB2とする(B2も円Cの接点ではないことに注意)。これがT2の逆点になる(1)
遠近どちらかの交点かは、円C2とAT2の交点の遠近関係の逆になる
A,B1,B2を通る円C3(青円)を描けば、それが求める解円の一つになる(7)
PPP問題のページを参照のこと)

後は、第二段階の接線m2, m3, m4の場合を同様に行えばよい。それぞれ対応するm,T,B,C のセットを次のように書きかえれば良い。(m2,T3,T4,B3,B4,C4),(m3,T5,T6,B5,B6,C5),(m4,T7,T8,B7,B8,C6)。それぞれ青円が目的の解円として、図だけ列挙しておくことにする。


反転幾何を利用した、アポロニウスの問題(CPP)の解までの作図手順

アポロニウスの問題の一つ、1つの円に接し、2つの点を通る円は、一般には下図のように二つの解がある。この問題の解の作図を反転幾何を利用して解くことができたので、紹介する。

反転幾何を利用する方が簡単という話をよく聞くが、本問題に関して言えば52手順で、通常の手順数が38(同条件にすると29)なのに対して大幅に増えるのだが、反転幾何の面白さは味わえた。

 1つの円に接し、2つの点を通る円の作図(52手順)
条件:2 点A , B、円C(中心点Cは未知としてみる)が与えられている(赤表示)
解の数:一般解は 2つ

方針(反転の使い方)点Aを中心とする適当な円を反転円とし、点Bと円Cを反転転換させる。反転円上にBがくるように反転円を設定すれば、点Bは不動点となり動かない。一方円Cは別の円Dに移る。点Bから円Dに引いた接線は無限遠を通る円と考えてもよい。そしてこの「円」は、反転させれば元の円に接して、点Bを通るはず(反転の性質から)。また無限遠を反転変換すると、反転円の中心になるのだったので、共通接線の接点を反転すると、反転円の中心点Aと併せて求める円の円周上の3点が決まる。よって、この3点を通る円を描けばよい。
なお「Bを通り円Dに接する直線」は二つ引くことができるので、それぞれの反形が作れて解の数は二つになる。

作図手順:
第一段階:与円Cの反形を描く(27手順)
①点Aを中心として、半径ABの円C1(黒点円)を描き、これを反転円とする(1)
(つまり、点Aを反転の中心に使い、点Bは反転円上の点になるので反転しても不変の不動点になる)
与円Cを円C1で反転させた円D (青円)を描く(26)
(「反転先の作図パターン」ページの「反転の中心を通らない円(反転円の外側にある)の反形の作図」を参照のこと。もちろん配置パターンによっては、別のパターンになる場合もあるが、考え方は基本的に変わらない)
第二段階求める円二つを描く(25手順)
与点Bから円Dへ接線を二本引く(直線m, 直線 n)(7)
直線mを円C1で反転させた円C2 (青円の一つ)を描く(9)
(「反転先の作図パターン」ページの「反転の中心を通らない直線(反転円と交わる)の反形の作図」を参照のこと)
直線 n を円C1で反転させた円C3 (青円の一つ)を描く(9)

図形の反転先の作図パターン16種類

前のページでは、点が反転円によってどこへ移動するのかという基本と、以下の4つのパターンについて話をしたが、ここでは実際に与えられた図形と与えられた反転円を使って、反形を作図して示していくことにする。

  1. 原点を通る直線は原点を通る直線にうつる
  2. 原点を通らない直線は原点を通る円にうつる
  3. 原点を通る円は原点を通らない直線にうつる
  4. 原点を通らない円は原点を通らない円にうつる
基本的には似た構造になるので、同じようなことをやっているに過ぎないのだが、実際アポロニウスの問題を解くのに使う場合は、様々な配置パターンによって使い分けが必要になるので、予め考えられる全てのパターンを列挙して準備しておく。

・16種類の作図パターン
下記16個の課題の作図手順を一つずつ示していく。ページ内リンクは張ってないので見たいものがあれば、スクロールして見つけて欲しい。なお既に「アポロニウスの問題」関連ページ「基本作図パターン集」において説明済みの作図については、数手順をまとめて1行でさらっと流して書いたので、詳細を確認したい場合は
基本作図パターン集」を参照して欲しい。

(反転円の内部にある)の逆の作図(10手順)
(反転円の外部にある)の逆点の作図(10手順)
反転の中心を通る直線の反形の作図(0手順)
反転の中心を通らない直線(反転円と交わる)の反形の作図(9手順)
反転の中心を通らない直線(反転円と交わらない)の反形の作図(19手順)
反転の中心を通らない直線(反転円と接する)の反形の作図(5手順)
反転の中心を通る円(反転円と交わる)の反形の作図(1手順)
反転の中心を通る円(反転円と交わらない)の反形の作図(15手順)
反転の中心を通る円(反転円と接する)の反形の作図(5手順)
反転の中心を通らない円(反転円と交わる)の反形の作図(20手順)
反転の中心を通らない円(反転円の外側にある)の反形の作図(26手順)
反転の中心を通らない円(反転円に内包され、反転円の中心点の外側にある)の反形の作図(26手順)
反転の中心を通らない円(反転円に内包され、反転円の中心点を内包する)の反形の作図(26手順)
反転の中心を通らない円(反転円を内包する)の反形の作図(26手順)
反転の中心を通らない円(反転円と外接する)の反形の作図(16手順)
反転の中心を通らない円(反転円に内接する)の反形の作図(16手順)

点(反転円の内部にある)の逆点の作図(10手順)
条件:反転円O(中心点O, 半径 r)が黒点円, 点 P(赤点)が与えられている
①Pから反転円へ接線を引き、接点をAとする(6手順)
②AからOPへ下ろした垂線の足が求める逆点 P'(青点)になる(4手順)
なぜなら△OPA∽△OAP' より、OP・OP’=OA^2= r^2
Pから反転円へ2本の接線を引き、その2接点の中点を P'としてもよい

点(反転円の外部にある)の逆点の作図(10手順)
条件:反転円O(中心点O, 半径 r)が黒点円, 点 P(赤点)が与えられている
方針:上のパターンの逆を辿ればよい
①Pを通りOPに垂直な線を引き、円Oとの交点の一つをAとする(4手順)
②Aにおける円Oの接線を引き、OPとの交点が逆点 P'(青点)になる(6手順)

反転の中心を通る直線の反形の作図(0手順)
反転の中心を通る直線(原点除く)は原点を通る同じ直線に移る(もちろん不動点は反転円上にある2点のみで、それ以外の点は同じ直線上の別の点へ移る)ので、何もする必要はない。

反転の中心を通らない直線(反転円と交わる)の反形の作図(9手順)
条件:反転円O(中心点O, 半径 r)が黒点円, 反転の中心を通らない(反転円と交わる)直線 m(赤線)が与えられている
反転円と交わる点は不動点(下図の点 A, B)、そして反形は中心点Oを通る円であることがわかっているのだから、その3点A,B,Oを通る円を描けばよい。PPPの作図方法は3点から2点を選んだ二組の垂直二等分線の交点Cを中心とした円を描けばよかったので、簡略図は下のようになる。

反転の中心を通らない直線(反転円と交わらない)の反形の作図(19手順)
条件:反転円O(中心点O, 半径 r)が黒点円, 反転円と交わらない直線 m(赤線)が与えられている
①Oから直線 m に垂直二等分線 n を下ろし、交点をPとする(4手順)
②Pの逆点P’ を描く(上記既出の方法で)(10手順)
③OP' を直径とする円(青円)を描けば(OP' の垂直二等分線が引ければ(4手順)、それとOPとの交点を中心とした円を作図するので、5手順)、それが目的の円になる。簡略図は下のようになる。

反転の中心を通らない直線(反転円と接する)の反形の作図(5手順)
条件:反転円O(中心点O, 半径 r)が黒点円, 反転円と接する直線 m(赤線)及び接点Pが与えられている
①反転円と接する点Pは不動点、一方上記二つのパターンから反形の円の中心はOP上にあることは明らかなので、OPを直径とする円を描けばよい

反転の中心を通る円(反転円と交わる)の反形の作図(1手順)
ここからの3つは、上の3つの逆のパターンになる。
条件:反転円O(中心点O)が黒点円, 反転の対象とする円C(赤円)は反転円Oと2点で交わり、Oを通る
①反転円Oと円Cの二つの交点を結べば、それが求める反形の直線 m (青線)である(1手順)

反転の中心を通る円(反転円と交わらない)の反形の作図(15手順)
条件:反転円O(中心点O)が黒点円, 反転の対象とする円C(赤円)は反転円Oに内包され、Oを通る
①点Oを通る任意の直線 n を引き、円Cとの交点をPとする(1手順)
②Pの逆点P’ を描く(上記既出の方法で)(10手順)
③P' を通りOP' に垂直な直線 m を描けば、それが求める反形(4手順)

反転の中心を通る円(反転円と接する)の反形の作図(5手順)
条件:反転円O(中心点O)が黒点円, 反転の対象とする円C(赤円)は反転円Oに内包されて点Pで接し、Oを通る
①OPを結ぶ直線 n を引く(1手順)
②点Pを通りOPに垂直な線 m を描けば、それが求める反形(4手順)

反転の中心を通らない円(反転円と交わる)の反形の作図(20手順)
条件:反転円O(中心点O)が黒点円, 反転の対象とする円C(赤円、中心点Cは分かっているものとする)は反転円Oと2点A,Bで交わり、Oを通らない
方針:反転円と交わる点は不動点なので、反形の円はその2交点を通る。あと通る1点をが分かればいいので、対象の円の分かりやすい点Pの逆点を求めよう
①OCを結び、円Cとの遠い交点をPとする(1手順)
Pの逆点P’ を描く(上記既出の方法で)(10手順)
③A,B,P 3点を通る円C' を描く。それが求める反形の(9手順)

反転の中心を通らない円(反転円の外側にある)の反形の作図(26手順)
条件:反転円O(中心点O)が黒点円, 反転の対象とする円C(赤円、中心点Cは分かっているものとする)は反転円Oの外側にある
方針:上のような不動点はないので、円Cの直径を構成する2点のそれぞれの逆点を求めて、それを直径とする円を描くことにする
①OCを結び、円Cとの2交点をそれぞれ A,B とする(1手順)
A,B のそれぞれの逆点A,B’  を描く(上記既出の方法で)(20手順)
ABを直径とする円を描く。それが求める反形の(5手順)

反転の中心を通らない円(反転円に内包され、反転円の中心点の外側にある)の反形の作図(26手順)
条件:反転円O(中心点O)が黒点円, 反転の対象とする円C(赤円、中心点Cは分かっているものとする)は反転円Oの内側にあり、反転円の中心点の外側にある
方針:一つ上の逆を行うことと同義である
①OCを結び、円Cとの2交点をそれぞれ A,B とする(1手順)
A,B のそれぞれの逆点A,B’  を描く(上記既出の方法で)(20手順)
ABを直径とする円を描く。それが求める反形の(5手順)

反転の中心を通らない円(反転円に内包され、反転円の中心点を内包する)の反形の作図(26手順)
条件:反転円O(中心点O)が黒点円, 反転の対象とする円C(赤円、中心点Cは分かっているものとする)は反転円Oの内側にあり、反転円の中心点Oを内包する
方針:方法論は上の二つと同じ
①OCを結び、円Cとの2交点をそれぞれ A,B とする(1手順)
A,B のそれぞれの逆点A,B’  を描く(上記既出の方法で)(20手順)
ABを直径とする円を描く。それが求める反形の(5手順)

反転の中心を通らない円(反転円を内包する)の反形の作図(26手順)
条件:反転円O(中心点O)が黒点円, 反転の対象とする円C(赤円、中心点Cは分かっているものとする)は反転円Oを内包する
方針:方法論は上の三つと同じ
①OCを結び、円Cとの2交点をそれぞれ A,B とする(1手順)
A,B のそれぞれの逆点A,B’  を描く(上記既出の方法で)(20手順)
ABを直径とする円を描く。それが求める反形の(5手順)

反転の中心を通らない円(反転円と外接する)の反形の作図(16手順)
条件:反転円O(中心点O)が黒点円, 反転の対象とする円C(赤円、中心点Cは分かっているものとする)は反転円Oと外接する
方針:反転円と対象円の接点は不動点なので、上の方法論のひと手間が省けるだけの違い
①OCを結び、円Cとの2交点をそれぞれ A,B とする(Bが接点とする(1手順)
の逆点A を描く(上記既出の方法で)(10手順)
ABを直径とする円を描く。それが求める反形の(5手順)

反転の中心を通らない円(反転円に内接する)の反形の作図(16手順)
条件:反転円O(中心点O)が黒点円, 反転の対象とする円C(赤円、中心点Cは分かっているものとする)は反転円Oと内接する
方針:上のパターンの逆を辿ればよい
①OCを結び、円Cとの2交点をそれぞれ A,B とする(Bが接点とする(1手順)
の逆点A を描く(上記既出の方法で)(10手順)
ABを直径とする円を描く。それが求める反形の(5手順)

・関連ページの読み進め方

「アポロニウスの問題」を解くのに反転幾何を利用する

本ページ群は、「「アポロニウスの問題」をコンパスと定規だけで作図する方法を、10種類の全て丁寧に解説するの続編だ。いきなりこのページに訪れた方は、まず先にそちらを読破し、「アポロニウスの問題」についてしっかり理解をして頂いた上で、読み進めて頂きたい。

・何故反転幾何なのか
様々な幾何の問題を解くときに、「反転幾何」の仕組を知っていると、別の簡易な問題に変換させてそれを証明すればよい、といった利用方法で活躍することがある。「アポロニウスの問題」を解くのにも反転幾何を使えるという話を聞いたので、まずは「反転幾何」とは何かを調べ、その次に実際に「アポロニウスの問題」を解くのに、その反転幾何をどう使いこなすのかを探ってみた。なお使う「反転幾何」については、中学幾何の知識の延長線上で理解できる範囲(数式も一切出てこないのでご安心あれ)しか扱わない。また厳密な証明のような議論は省くので、細かい部分では不正確な記述があることはご容赦願いたい。

実際筆者が「アポロニウスの問題」の10種類の問題で、反転幾何によって解けたと言えたのは、筆者の能力不足か「CPP」「CLP」「CCP」の3つだけだった(反転幾何を利用することで解く方法は別のページでそれぞれ示す)。しかも手順数は反転幾何を利用しない場合よりも多かった。なるほどそう解くのか感心に思う反面で、ちょっと捻り過ぎ(凝り過ぎ)じゃないかとも思った次第だ。だが、それも「アポロニウスの問題」に限って言えば、ということになるだろう。

・反転変換について
「反転」とは、平面上の点を別の点に移す変換のこと。そのために使う円のことを「反転円」あるいは「基準円」などと呼ぶ。その円Oの中心を点O、半径は r としておこう。この円Oによる「反転」を以下のように定義する。

『反転により点Pは、半直線OP上の点で、OP×OP′=r^2 (rの2乗)を満たす点P′に移る

定義から分かると思うが、反転円上の点Qは反転変換しても動かないのはわかるだろう。OP×OP′=r^2=r ×r OQ×OQ' なら、半直線OQ上の点で OQ'なのでQ=Q’でしかないからだ。

幾つか言葉の定義を加えておく。点Oを反転の中心、r を反転半径P'のことを反転円Oによる点Pの逆点という。またある点の反転を2度繰り返せば、P→P'→Pとなることから元に戻ることも分かるだろう。

そして、「直線」は点の集合体なので、ある直線を「反転」することもできるし、「円」などの図形も丸ごと「反転」することができる。反転で図形Aが図形A'に移るとき、図形A'を反転による図形Aの反形という。

なお、点O自身の反転変換先はP=Oになるので「OP×OP′=r^2」の定義では決められないことが分かるだろう。Pを反転の中心Oに無限に近づけていくと、P' は無限に遠い点に移ることになるので、特別な場合として「無限遠点」にうつされる「アポロニウスの問題」を解く場合に、これを利用することになる。

・図形はどのように反転されるか
別のページで作図方法と共に詳しく解説するが、反転によって直線や円はどのように反転変換されるかと言うと、

  1. 原点を通る直線は原点を通る直線にうつる
  2. 原点を通らない直線は原点を通る円にうつる
  3. 原点を通る円は原点を通らない直線にうつる
  4. 原点を通らない円は原点を通らない円にうつる
どうしてこのようになるのか、代数学的に理解したい(証明して欲しい)方は、外部のページ「反転にまつわる軌跡の有名問題を参照して頂ければ、納得できるだろう。

・反転の性質①反転によって接する、接しないという状況は変わらない

円と円または円と直線が接するというのは共有点が1つということ。反転は一対一対応なので2つの図形の共有点の数は反転後も変わらない。つまり「円と円が接している」といった状態の時に、その「反形」同士も接しているという状態を維持するのだ。反転後の図形の作図法は別途紹介するが、下図の通り「反形」同士も接しているだ。

そして「円と円が接している」状態よりも「円と直線が接している」方が、幾何学では扱いやすいことが多い。つまり、2円がある場合、反転によって一方の円を直線に移し,反転後の世界で取り扱いやすい「円と直線」の接している状態で問題を解くと楽になるのだ。アポロニウスの問題を解く上でメリットになりそうなことが分かるだろう。

反転の性質②反転円と直交する円は反転によって変わらない
アポロニウスの問題を解く上で、何かの操作を行っても変わらない点や変わらない図形はメリットになる。つまり不動点や不動円などがあると便利だ。すでに不動点については、上の「反転変換について」の節で、反転円上の点Qは不動点であるという話をしてある。

そして反転円に直交する円の反形は、その円自身であるので、反転しても動かない不動図形になる。証明は一部だが、以下の図で納得して頂きたい。

反転の性質③直線や円が交わる角度は反転変換で変わらない
また反転変換では角度を保つ性質もあるので、例えば直交する線を反転すれば、下図の通り直交する円となる。

アポロニウスの問題では相似形を扱うことも多く、具体例は思いつかなかったが、角度が変わらなければ、相似関係が不変であることも重要そうだ。また上の二つ(直交する図形同士/接する図形同士を反転しても、その関係は同じである)は、その一例とも言える。

・参考文献

・関連ページの読み進め方
下記リンクを上から順番に読んでいって欲しい。

・「アポロニウスの問題」を解くのに反転幾何を利用する(このページ自身)