ネットレイティングスのメルマガNielsen Online REPORTER 2012年3月22日号による。
http://www.netratings.co.jp/email_magazine/2012/03/post-6.html
Nielsen Online Reporterより転載。転載許諾No.07012007-001
■ トマトジュースが店から消えた?
2月にスーパーやコンビニエンスストアの店頭から、トマトジュースが一時期消えていたのをご存じだろうか?事の発端となったのは、京都大大学院の研究グループが、トマトから脂肪燃焼に有効な健康成分を発見し発表したことである。メタボリック症候群の予防に効果があるというメディア報道も相まって、消費者の間でトマトやトマトジュースの人気が急激に高まり、品切れが続いた。今回は、このトマトジュース特需の真相を弊社のソーシャルリスニングプラットフォーム「Nielsen BuzzMetrics」を用い、分析してみることにした。
■「トマトジュース」の話題が盛り上がったのは報道の5日後だった!?
まずは、時系列で日別の書き込み数をみてみた。(図表1)書き込み数の推移をみてみると、①2月10日、②2月12日、③2月15日、④2月18日と4つの時点で盛り上がっていた。京都大大学院の研究発表が報道された日(①2月10日)よりも、③2月15日に最も大きな盛り上がりをみせている。
<図表1>「トマトジュース」についての書き込み数トレンド/(日別)http://www.netratings.co.jp/email_magazine/2012/03/21/20120322_01.gif
■「飲むと痩せる!」から話題が変化した
次に、盛り上がった日ごとの具体的なキーワードをみてみた。(図表2)
<図表2> トマトジュースと共に書かれたキーワード(名詞)ランキングhttp://www.netratings.co.jp/email_magazine/2012/03/21/20120322_02.gif
2月10月の書き込みを見ると、上位に、「脂肪」「燃焼」「効果」などのキーワードがランクインしている。具体的なメッセージをみたところ、研究発表のニュースについての記事が多くリツイート(*1)され、書き込みされていた。また、「メタボ」のキーワードも上がっており、「痩せること」について話題になっていることがわかる。
次に2月12日では、「効果」「脂肪」などのキーワードは継続的に上がっているが、「精子」「判明」や「 http://insyoku.livedoor.biz/ 」が新たに出現していた。これは、2011年12月にカゴメ株式会社と国際医療福祉大学病院が発表した「トマトジュースに精子運動率の改善効果」の過去の記事についてであり、今回の京都大大学院の発表に触発されて、再度ツイッター上などで話題になっていたようであった。
2月15日は、2月10日の発表の日の約2倍の書き込みがあり最も盛り上がった。キーワードを見ると、「売れすぎ」「読売新聞」というキーワードが新たに上がっている。上位に「効果」「脂肪」などのキーワードがあるものの、それらのキーワードについての具体的な書き込みをみると、「トマトジュース売れすぎ…脂肪燃焼効果の論文で」という読売新聞の記事が多くリツイートされ、トマトジュースが売れている、品薄になっているという話題が盛り上がりをみせていた。2月18日には、「塩分」というキーワードが登場した。これはNEWSポストセブンが発表した「トマトュース騒動 毎食200ml摂取で塩分2.4gで心配の声」という記事が話題にされたからであた。
書き込み数からみると、「脂肪燃焼の効果」については継続的に語られているものの、最も書き込み数が多かった2月15日には「売れすぎている」という話題が上がっていた。また、時間とともに、過去の研究や、トマトジュースの塩分についてなど、トマトジュースについて新しい話題も上がっていたことがわかった。
■ なぜ買ってしまったのか?
ここまでは、書き込みの内容について時系列でみてみたが、それではなぜ実際の店舗からトマトジュースが無くなっていたのか、もう少し堀り下げてみていくことにしよう。
<図表3>トマトジュースの購買理由http://www.netratings.co.jp/email_magazine/2012/03/21/20120322_03.gif
2012年1月10日から29日の20日間と、2月10日から29日の20日間に、トマトジュースを買った/飲んだという書き込みで、理由が書かれているものを、各期間100件ずつサンプリングし比較した。(図表3)1月に買った/飲んだ理由としては、「体にいいから」飲んでいるという書き込み(47%)が最も多く、“トマトジュース=健康的な飲み物”として認識されていたようだ。次に割合が多かったのが「その他」(31%)で、料理に使うために購入したという理由や、レッドアイなどの飲み物を作るために購入したという理由がみられた。
一方、2月10日以降に書かれた、買った/飲んだ理由を見てみると、「痩せたいから」買ったという理由と、「話題だから」買ったという理由が同じ割合で書かれていた(27%)。やはり、トマトに脂肪燃焼効果があると発表されただけあり、痩せるためにトマトジュースを飲んだ、買ったという理由は上位にあがった。
「痩せたいから」と同率で理由にあがったのが、「話題だから」買ったという書き込みであり、その中には、「テレビに踊らされてトマトジュースを飲んでるなう」とメディアに“踊らされ”ていることを敢えて書きこむ消費者や、「売り切れ祭り開催と聞いたのでスーパーに行ってトマトジュース購入」というような、トマトジュースが売り切れている話題を楽しんでいるかと思わせる書き込みもあった。
興味深いのは、3位にある「習慣だから」(25%)買ったという理由の割合が、1月に比べて増加している点である。具体的にみると、「トマトジュース毎日飲んでてよかった。意味あるかなと思ってたが意味ある!」や「脂肪燃焼効果があることを知らずに飲んでいたのだが、嬉しい誤算である。」と自分の行動に後付けされた意味を喜ぶ書き込みがあった。
一方で、「トマトがダイエット宣伝で急に売り切れらしいが元からトマトジュースを飲んでいた私には迷惑な話である」と訴える書き込みもみられた。今回の一連のトマトジュースの騒動は、習慣的にトマトジュースを飲んでいた消費者にも、改めて声を発する機会も与えたともいえる。
■ 盛り上がりのキーワードは「痩せる」「イベント」「固定ファンの後押し」
今回の分析からは、痩せたいからトマトジュースを買うという消費者像だけではなく、騒動をある種のイベントとして捉えているような楽観的な消費者像もみえた。また、消費者の間である程度トマトジュースが「体にいい」という認識が以前からあったこと、習慣的に飲んでいた「ファン」的存在を刺激したことも、今回のトマトジュース特需の背景にあるのではないだろうか。
現在は一時に比べると、供給はやや落ち着いてきているトマトジュースだが、今後、盛り上がりをみせる新たな食品の動きを、トマトジュースと比較して、ソーシャルメディアで分析してみるのも面白いかもしれない。
*1: リツイートとは、他のユーザーのツイート(つぶやき)を引用形式で自分のアカウントから発信すること。「RT」と表記されることが多い。
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