ネットレイティングスのメルマガNielsen Online REPORTER 2011年5月10日号による。
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Nielsen Online Reporterより転載。転載許諾No.07012007-001
震災から約2ヶ月がすぎ、私の住んでいる東京など直接の大きな被害を受けていない地域では、徐々に日常を取り戻しつつあると言える。しかし未だ続く余震の不安や原発の問題、節電のため「街が暗い」といった間接的な影響もあり震災は未だ人々の心に暗い影を落としている。
こうした中、企業にとって大きな関心となっているのが消費者の感情変化である。消費者に受け入れられるために、いつまで自粛をすればよいのか?いつから通常の営業活動を行えばよいか?企業は非常に難しい選択を迫られていることだろう。
そこで、個人の情報発信の場であるソーシャルメディア(*a)から、消費者の感情変化が見えないか分析を行った。分析方法としては、能動的な感情である「**したい」という言葉を100ワード程度ピックアップし、大きく以下の5つのカテゴリーに分類し、震災前と震災後の記事数の変化(*b)を見ていくことにする。
(1)「買いたい」「欲しい」など購買意欲を表す言葉
(2)「学びたい」「上達したい」など挑戦意欲を表す言葉
(3)「食べたい」「遊びたい」など外食・レジャーに関連する言葉
(4)「結婚したい」「抱きしめたい」などの愛情に関する言葉
(5)「休みたい」「癒されたい」など休息意欲を表す言葉
*a)twitterおよびブログを分析の対象とした。
*b)時系列の変化をみるために震災前(1/30~3/12, 6週間)の記事数の平均値(週単位)を100として記事数の単位とした。
■震災後、消費者の購買意欲は明らかに減少している。
まず以下のグラフは、「買いたい」「欲しい」など購買を意識した言葉が書かれた記事数の週別変化である。震災時に大きく減少し、その後2週間程度で震災前の90%程度まで回復しているが、4月末に至っても震災前の水準まで回復していないことが見て取れる。
図1_買いたい欲しいhttp://www.netratings.co.jp/hot_off/20110510_01.png
■外食やレジャーにも関係する感情も減少している。
また、「学びたい」「上達したい」といった感情、「食べたい」「遊びたい」に分類した感情も震災時に大きく減少していることが見て取れる。
”少し様子見しよう”,"落ち着くまで待つ"といった書き込みも多く見られ、この2つの感情共に震災前水準の90%程度で推移している。
図2_学びたい食べたいhttp://www.netratings.co.jp/hot_off/20110510_02.png
■逆に記事数が増えた感情もある
そんな中、逆に記事数が増えた感情も見られた。まず「結婚したい」「抱きしめたい」など愛情に関する感情である。震災の翌々週には2月以降で最高の記事数を記録し、徐々に減少傾向にあるものの震災前よりも高い水準を維持している。
図3_結婚したい
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そしてもう一つは休息したいという感情である。グラフからは震災後1カ月間は震災前平均よりも少ないが4月中旬から平均値を超え上昇傾向にあることが分かる。計画停電など震災の影響で緊張した気持ちが1カ月後ぐらいから徐々にほぐれ、癒しを求め始めたのではないかと思われる。
図4_休みたい
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■これらの分析から
震災後1カ月間で、ある程度日常を取り戻したと言えるが、買い物や外食、レジャーなどに関しての消費者の感情は、未だ90%程度しか回復していないのではないかと予想できる。自粛ムードもあり、消費者も遊びに行って良いのかなど疑問を持ちながら生活していた結果ではないだろうか。
逆に、愛情や休息などは震災直後から上昇傾向がみられる。4月末の時点ではゴールデンウィークの直前ということもあり、震災前よりも10%程度多くみられた。先行き不安のなかで、安心・安定を求める気持ちが増えているのかも知れない。
このように、過去例を見ない震災はソーシャルメディア上の消費者の感情にも大きな変化をもたらした。ゴールデンウィークは例年並みの人出だったとのニュースもある中、今後、消費者の感情がどう変化していくのか注視していきたい。
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