2011/05/03

「錯覚の科学」を読んだ

実験Ⅳ~Ⅵあたりに関しては、因果関係と相関関係とか、データのウソ的な視点からもともと知っているような話が多かったので、付箋が多く付いたのは実験Ⅰ~Ⅲだった。

目前で行われていることが「見えていない」、「注意して見た事実」が捻じ曲げられてしまう。犯罪被害者が目の前で注意して見た犯罪者すら、間違えて認識してしまう。そんな時代にどう自分を守ったらよいのか、そんなことまで考えさせられた。まさに「想定外」では済まされない。

人間の心や脳の認識の特質を、きちんとした実験によって明らかにした大変興味深い本だ。最後に一つだけ「脳トレしても、ボケは防げない」の一文をご紹介しておこう。

「現在広く普及している脳トレーニング・ソフトの中で、研究室で練習した項目意外に応用が効いたという報告例は一つもなく、大半が狭い応用である---つまり自分が学習したものとよく似た課題にのみ、応用が効くのだ。...あなたの知的能力を長くたもつ最良の方法は、認知能力を鍛えることと殆ど関係がないようだ。脳を直接鍛える方法より体を鍛える方法(特に有酸素運動)のほうが、効果がありそうだ」

<目次>
はじめに:思い込みと錯覚の世界へようこそ
実験Ⅰ:えひめ丸はなぜ沈没したのか? 注意の錯覚
実験Ⅱ:捏造された「ヒラリーの戦場体験」 記憶の錯覚
実験Ⅲ:免罪証言はこうして作られた 自信の錯覚
実験Ⅳ:リーマンショックを招いた投資家の誤算 知識の錯覚
実験Ⅴ:俗説、デマ、そして陰謀論 原因の錯覚
実験Ⅵ:自己啓発、サブリミナル効果のウソ 可能性の錯覚
おわりに:直感は信じられるのか?

発行:文藝春秋
著者:クリストファー・チャブリス&ダニエル・シモンズ
訳者:木村博江
定価:1,571円+税
約370ページ



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