2009/01/18

IABのAudience Reach Measurement Guidelines原案は結構曲者だ

http://www.iab.net/media/file/Audience_Reach_Guidelines.pdf
調査データに正確性を求めるのは正論だが、この複雑な世の中においてあまりに厳格にしてしまうと誰も使えないものになりかねない。IABのAudience Reach Measurement Guidelines原案はそんなことを考えさせるものだ。

テレビ視聴率だって、厳密に言えば、ビデオ再生、職場での視聴、その他いろいろあるけど、全てに対応して100倍のコストを掛けて正確性を上げても、誰も買えないサービスとなってしまう。調査の限界を知った上で、コスト効率が最適のところに収束せざるを得ない訳だ。

ネット視聴率やネット広告配信データにしても同じだと思う。またこのネット視聴率とネット広告配信データの二つも性格が違うので、それを多分一つのガイドラインで話すことで、難しさを増しているような気がする。

さて少し具体的にこのガイドラインの内容を紹介しながら、話を進めていこう。基本的にこのガイドラインの対象前提などとしては、ネット視聴率や広告計測系データに関したもので、さらに
・クライアント主導の行動の計測
・ロボットなどは対象外
・キャッシュからのアクセス含むが、オフライン行動は除く
・調査機関の関係者のアクセスは除く
・透明性と説明責任

そして、まずAudience Reach Measurementsの4定義がされる
・Unique Cookies
・Unique Browsers--クッキーは削除される可能性があるので、unduplicated Cookied Browsersともいえる。クッキー削除率の違いによってUnique Cookiesとの乖離が様々になる
・Unique Devices--1台で複数ブラウザ利用の場合があるからということだろう
・Unique Users あるいはUnique Visitors--複数のPC、携帯その他のデバイスを一人で何台も使う場合があるから。

ということで、分類としては尤もだなあと思う。ネット視聴率でパネルベースだと、複数PCにソフトをインストールして、人ベースで登録させることが可能なので、携帯などの他デバイスとの重複を除くところまでは無理だが、最大限ユニークユーザの計測に近いところまでできているが、広告配信などcookieベースが主なサービスは、それがユニークユーザと随分乖離しているだろうといわれると、そうですねという返事しかできないかもしれない(最新の広告配信テクノロジーではどこまで可能なのか誤認識があるかもしれないので、間違っていたら指摘して欲しい)。このガイドラインの範囲外だろうが、アクセス解析の基本cookieベースが多いと思うので、こちらも事情は同じ。

で、結局メディアや広告主はUnique CookiesからUnique Usersを知るための信頼のおけるアルゴリズムを必要としている。ということで、クッキー削除率や利用デバイス、利用場所などのいろいろな調査データなどからこのアルゴリズムを作るべきというのだが、未来永劫無理だろう。

確かに、Unique Usersと表現していることの多い指標の本当の定義がこの4つの定義のどの意味で使っているかを、サービス提供者ははっきり示せというのは、正しい要求だろう。またネット視聴率での拡大推計のためのロジックも明示すべしというのも正しい要求だと思う。しかしそれぞれの考え方、手法が異なるので、全てをあるロジックに統一するというのは無理なので、自分でもよく言うが、結局調査データは、

・何を集めているのか(データの限界を知る手掛かりになる)
・どういう方法で集めているのか(サンプリングなど調査品質を決める重要な項目)
・どう集計しているのか(次の指標にマッチした集計に本当になっているのかの計算式)
・その指標の定義は何か(まさに今回の4つの定義のような、「意味」を示す)

をきちんと説明することに尽きるのだ。アクセス解析でも、ネット視聴率でも、広告配信データでも全て基本は同じだと考える。あまりにバラバラな基準があれば、それは同じにしていく努力を業界としてはしていく必要はもちろんあるので、こういった議論のベースを作ってもらうことで、話も進んでいくことを期待したい。非常に長く、細かい英語のドキュメントなので、最後まで読破していない。間違った文脈になっている可能性もあることをご容赦頂きたい。

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