2008/02/28

何故ウェブ解析が難しいか(Webアナリストにも必要な3つの素養)

最近いくつか拝聴した話と自分が断片的に思っていた事が、少し整理できてきたようなので、何故ウェブ解析が難しいのかをまとめてみる。少し焦点を絞って議論を進めてみたいので、前提としては、比較的大きな企業で、ウェブサイトが小さな役割ではなくなっているようなケースを想定している。アクセス解析ツールの導入は比較的進んでいるが、活用面でまだまだ効果を発揮できていないというのではないかという、問題意識からだ。当然各社の事情は異なるので、かなり一般化した粗い話にはなる。今回は人材面に話を限定している。

まずメディアやキャンペーンのデータ提供元という視点で考えてみよう。いわゆるマス4媒体時代のメディア・データの扱いはどのようなものだったのだろうか。テレビ広告を行うような大企業であれば、メディア・データは代理店が持ってくるものである。そして結果のデータも少量のデータしか恐らく無かったのだと思われる。つまりサービス提供側にデータがあったので、相対的にサービス提供側が強かったと言える。

しかし現在自社メディア(サイト)を持っている企業では、テレビ広告の効果の一部はサイトのアクセスで測る事も可能だ。またサイトのアクセス・データは自社自身が持っており、しかも全数のアクセス・データから大量のデータ分析が可能になった。

例えば何かの販売データであれば、相当昔はメーカーが出荷データを持っていたので一番強かった。しかしついこの間までは、POSの利用で流通が一番強かった。しかし今や自分でメディアを持った消費者が強くなっているという話がある。素材は全然違うが似たような話で、データや情報を持つものが強いということだ。

だが情報やデータを駆使できる消費者などは少なく、本当に恩恵を受けているのはごく一部の賢い消費者だけだろう。同様にアクセス・データをサイト運営者である企業が持ったからといって、それを賢く活用できるかどうかは別問題だ。むしろやっかいな仕事が増えてしまったと言えるかもしれない。自分でやらなければならないのだから。

オンライン・キャンペーンを行う場合も、一部は広告代理店側にデータはあるかもしれないが、企業サイトへ誘導した場合は、内部の動きやコンバージョンは企業サイトの方に集まる。こういった場合、より深い効果測定をするには、両者の協力で、データを統合的に見ていくことが必要になる。

さて別の面だが、一方でウェブサイトはテクノロジーと共に進化し続けているため、技術面から考えると、ウェブ技術に対する最低限の理解が必要であることに加えて、常に最新のウェブ技術への理解が必要である。当然その技術を使ったウェブ・マーケティング手法もどんどん進化しており、こちらはマーケッターであれば本業としてトレースしていかなければならないだろう。

ということで、ウェブサイトの効果測定をきちんと行うのであれば、企業のウェブサイト運営責任を持つチームの構成員には(全体として)次のものが求められるのではないか。運営チームが広報、宣伝、マーケティングといった部門であれば、ウェブサイトに於ける通常のそれらのコミュニケーション機能をこなしながら、それに加えて必要ということだ。

必要とされる3つの素養:
1.調査データを扱うリテラシー
2.ウェブ技術やその応用
3.ウェブ・マーケティング理論や実務

こう考えてみると、これらを全て兼ね備えた(あるいは兼ね備えられる潜在能力や意欲のある)人材は社内にそうそういるとは思えないし、外部から探すのも難しいだろう。ちなみに私は1がベースの人間だが、相当な時間を2と3のキャッチアップために時間を割いている。

まあ3つ全部でなく、その内の二つの素養を持った人が大勢いて全体的にカバーできれば、それが現実的なところだろう。単純作業は外部のリソースを使うなどのリソース・マネジメントを行えば、ある程度の対処はできるのではないか。今回は「お金」というリソースについての制限は取り敢えず考えないことにする。

仮に問題点が上記で、やる気もお金もあるのに、人材面の問題でウェブ解析が難しい(いっこうに効果を生まない)ということなのであれば、その問題点を潰せばよいということになる。

必要とされる3素養をカバーするために:
1.社内トレーニング
2.社外トレーニング

必要とされる3つの素養のうち二つの素養を持った人が大勢いるのであれば、直ぐにお互いに足りない素養を教えあう事で、全体のレベルアップが可能なはず。しかしこれは忙しい企業内では簡単ではない。本来業務ではないので、OJTの扱いでは誰もやらない。強制的に制度としてトレーニングを行い、しかもモチベーションも維持させるようなインセンティブを与えない限りうまくいかない。

また本当に身に付くトレーニング方法は、教科書を学ぶのではなく、自分で考え、間違い、気付くことで覚えるものなので、できれば、時間の半分以上が演習形式の外部トレーニングがあれば、それをお奨めする。つまり市販の良書を読んだ上で演習中心のトレーニングを受けるということだ。

調べた事はないが、マーケティング調査の講義などは色んなところでやっているのではないか。ただ演習中心でやっているところは少ないかもしれない。またトレーニングというと誤解を生みそうなので書くが、使っているアクセス解析ツールのトレーニングを受けろとはいう狭い範囲の話はしていない。これについては別の機会があれば触れるが、ここではもっとベースの知識レベルを上げるトレーニングの話をしている。

さてもう少し具体例で話をしてみよう。

1.IS部門がウェブ担当で、アクセス解析も責任を負っている場合一般的にこの場合は、必要とされる3つの素養のうち「1.調査データを扱うリテラシー」と「3.最新のウェブ・マーケティング理論や実務」が非常に弱いと考えられる。例えば、同じ集計をしようとしても、マーケッターが考える計算式とプログラマーが考える計算式が違う、すなわち話している言葉が違うということがある。しかも違う解釈をしている二人が違いに気がつかずに放置されているなんてことも、きちんと仕様書に計算式が明記されていなければ実際起こることなのだ。調査データを扱うリテラシーを持っていれば、指標の定義が厳密に定義されていることが、データの正確性を担保する重要なチェック・ポイントであることを知っているので、こういうすれ違いを減らすことができる。「知っている積り」が間違いのもとなのだ。勿論多くの場合は小さな誤差の話で済むが、いつか致命的な問題を引き起こすこともある。

2.宣伝部がウェブ担当の場合一般的にこの場合は、必要とされる3つの素養のうち「1.調査データを扱うリテラシー」にやや不安、「2.最新のウェブ技術やその応用」が非常に弱いと考えられる。しかしこの2は意外と様々な専門書は多数あるものの、マーケター向けの平易な教科書と教育コースがあるかどうかはよく知らない。

まあやる気とお金があれば、手っ取り早く、時間をお金で買うということだ。そして無駄なお金を使わないように注意するということにも気を付けたい。せっかく教育投資をした社員が次々と辞めていくようでは意味がないので、総合的な判断が必要だろう。最近の人事事情は詳しくないが。。。

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