2009/08/20

総務省の「インターネット検索エンジンの現状と市場規模等」に関する調査はひどいなあ

2009/8/20に総務省は「インターネット検索エンジンの現状と市場規模等」に関する調査結果を公表した。

ポイントとして、挙げられた下記3つのうちの最初の二つが酷い。3つ目は野村総研のデータなのか、それを参考にしたオリジナルな部分があるのか、本を持ってないので確認できないが、この程度のレポートは民間に任せた方がよいのではないか。よっぽど詳しく良質なデータや予測が巷にあふれていると思うのだが。。。

A.インターネット上で検索できる情報量は、ブロードバンドの普及、動画及び音声ファイル(有料動画及び会員制サイトを除く。)の増加により2009年1月までの5年間に6倍に増加。

B.2008年度の検索エンジンの月間延べ利用者数の伸び(2002年1,646万人→2008年4,775万人)は、インターネット利用者数の伸びを上回る勢い。
 
C.2008年度のPC向け検索連動型広告市場は1,245億円。2010年には現在のラジオ広告市場と並ぶ1,524億円市場への成長が見込まれる。

まずAからいこう。下図の一番上のグラフが該当する。米印の注意書きをよく読んでみよう。何と5年以上前のデータを基に、テキスト/画像/動画の比率を2005-2009年まで固定的に使っているようだ。恐らく情報量で言えば、動画のビット数が大きいため、現在では殆どが動画ファイルの情報で占められるのではないか。5年前の何らかのシェアを、この急増して利用形態も変化するネットのマーケットで固定で使っているところが、「酷い」と思う。

あと、サーバー台数はNetcraft社の数字を使っているが、こういう情報量を推測するような場合に参考にするに相応しいものなのか十分吟味したのだろうか。

次にBにいこう。こちらは私の専門領域でもある。「検索エンジンの月間延べ利用者数」に何の意味があるのだろう。これはグラフの凡例から推測すると、正確には、「各検索エンジン(どれだけ対象にしたのか不明だが)の月間利用者数の単純合計」のようだ。いろんな検索エンジンを使えば、「延べ」は増える。検索サービスだけが、非常に伸びているかのごとく聞こえるが、実際は「月間のユニークユーザ数」で比較しなければ意味がないので、都合のよい使い方をしている。

また「検索サービスの一人当たり月間利用回数」は横ばいで、別に利用頻度が全体で増えているわけでもない。「検索」に焦点を当てているため、伸びていることを言いたいのはわかる(そして検索市場が発展しているのは間違いない)が、数字を恣意的に使っちゃいかん。このグラフはネットレイティングスがデータソースだが、ネットレイティングスに問い合わせれば、検索ユーザーの月間ユニークユーザ数くらい出してもらえる。少なくともこの1年検索カテゴリー全体のリーチは増えていないことを私は知っている。

最後は次いでだけど。3番目のグラフを見てほしい。正の強い相関があるようなグレーの楕円が書いてあるんだが、こんな強い相関があるようには見えない。グレーの楕円は外してもらいたいものだ。左下の塊は別として、比較的まんべんなくばらついている様に見えるが、如何だろう。確かに相関係数を出せば、それなりに正の相関にはなっているには違いないと思うが、まだ目は見えている積りだ。

結局オリジナルは390社のアンケートだけのようにみえるので、そのオリジナルな調査を中心に話を展開した方がよかったのではないだろうか。多分誤解もあるだろう。関係者の方は是非教えてコメントしてほしい。


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