2009/01/16

グーグルが示したNetRatingsのサーチシェア調査に誤解あり

ネットレイティングス調べという形でグーグルが2008年12月22日に開催した同社会見において、Google41%、Yahoo44%という発表を行ったという報道があった。
http://www.atmarkit.co.jp/news/200812/22/google.html (@IT「Yahoo!の背中見えた? グーグル日本法人が「よい年だった」」)
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20081222/321902/ (ITpro)

そんなにシェアで差が縮まっているかなあという違和感を覚えたのは記憶しているが、報道記事はそのままこのブログには引用しない方針なので放っておいた。すると2009年1月15日ネットレイティングスのNielsen Online REPORTER 2009年1月15日号において、これをやんわり否定しているとも取れるメールが飛んで来た。
http://www.netratings.co.jp/hot_off/archives/NNR01152009.htm (オリジナル)
http://japan.cnet.com/marketing/story/0,3800080523,20386502,00.htm (CNET Japanへの寄稿、内容は同じ)

なるほど、そういう理由だったかと氷解した。詳しくは既に下記SEM酒場でよい記事が出ているのでご参照いただきたい。このブログの筆者はネットレイティングスの視聴率サービスも利用されているようで、この44%、41%シェア算出のトリックについて、自分で元データを確かめている。まさにメディア報道の表層だけで拙速に判断せず、自分できちんと金を払って価値あるサービスを使い、正しく判断活用し、情報発信している姿勢な見習いたいものだ。
SEM酒場(
http://sem-bar.blogspot.com/2009/01/yahoo-japan-google.html

少し補足すると、そもそも日本で、検索シェアと題して公表しているデータは非常に少ない。最近ではcomScoreがリリースしたこれくらいのものだろう。こちらのデータは一番下に貼り付けておいた。
http://www.comscore.com/press/release.asp?press=2599
ここでも下にほとんど見えない注釈に目を凝らそう。GoogleにはYouTubeでの検索も入っているという。つまり前提(何を母数にするか、何を対象に含めるか)でシェアなんて、いくらでも操作できる。これを知らずしてメディアもユーザも妄信してはいけない。私が常日頃から言っているとおり、原典にあたることだ。今回は有料サービスなので、一般の人は無理だが。

ここまでの深読みできる業界関係者で、ブロガや記事を書く人はまずいない(事情を知っている人は相当いるに違いないが)と思うので、こういった↓紹介は、致し方ないと思う。
http://search.submit.ne.jp/blog/news/aboutnews/003059.html

しかし相当な影響力のもっていらっしゃるAd Innovator様が2009年予想のトリで「7.[国内] Googleの検索シェアがYahoo! Japanを超える」の根拠として、万が一この44%,41%報道だけを利用しているのなら、ちょっと厳しいかなと思う。文脈全体を否定するものでは当然ないが、数字が一人歩きする影響力の増幅が懸念されるので。http://adinnovator.typepad.com/ad_innovator/2009/01/%E6%98%8E%E3%81%91%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%A6%E3%81%8A%E3%82%81%E3%81%A7%E3%81%A8%E3%81%86%E3%81%94%E3%81%96%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E4%BB%8A%E5%B9%B4%E3%82%82ad-innovator%E3%82%92%E3%82%88%E3%82%8D%E3%81%97%E3%81%8F%E3%81%8A%E9%A1%98%E3%81%84%E3%81%97%E3%81%BE%E3%81%99.html


改めて自戒の念もこめて、原典が確かめられないメディアの報道は、そのまま流してはいけないなあと再確認するとともに、メディアにおかれては、通信社じゃないんだから、そのまま鵜呑みにして情報を流すだけでは、何の付加価値も無いということを自覚して欲しいものだ。自分はこの44%41%のシェアには違和感を覚えた。記者の皆さんは違和感がなかったのだろうか。あったのなら、何故ネットレイティングスに確認しなかったのだろうか。まあ情報が氾濫していて、時間に追われて、それを流すだけでも大変なのはわかるが、そんな時代だからこそ、きちんとした判断でよりよい情報に加工して流してもらいたいものだ。

今回利用されたデータを元に第3者機関発表のクレジットを付けて独自にシェアを作ったのは、まあ故意でなければ致し方ないかとおもうので、当然関与された関係者を非難する積りもないので、念のため。情報提供する側も使う側も、メディアで流す人も、こういった経験を糧にしていって欲しいということに尽きる。

2 件のコメント:

ikakiuchi さんのコメント...

ご紹介されている@IT記事を執筆しました。@ITの垣内です。Googleの会見終了後に、Googleが示す数値が正しいのかネットレイティングスに確認しようとしたのですが、広報に連絡が取れず、上記記事のようになってしまいました。情報の信頼性が確実でないことを記事内に注記すべきでした。少し反省。

hiromi ibukuro g さんのコメント...

垣内様、
わざわざコメントありがとうございます。確認しようとされた訳ですね。勝手な憶測失礼致しました。

私も昔メディア側にいました。臆せずこれからもガンガンやってください。ご活躍を期待しております。